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ブルジョアの愛人
第23章 幸せは彼へのお礼
大橋秀隆を気にし始めたのは、それからだった。
「変な男性には気をつけて」「幸せになってください」祖母の願いを、熊が眼鏡を掛けたような彼は叶えてくれそうな気がした。
彼が休みの日に一度、古参の女性店員に訊いたことがある。
「大橋チーフって、付き合っている女性とかいるんですか」
「聞いたことないな。大橋さんって何か、女嫌いオーラ出してるじゃない? だからゲイなのかなって私思ってたんだけど、そうでもなかったみたい」
訊いてもいないことまで教えてくれた彼女は、言ったあとで意味ありげに莉菜を見た。あれが何だったのか気づいたのは、彼と付き合い始めてからだ。
私が高校三年生になるとほぼ同時に、彼もチーフから店長へ昇任した。
休憩中に就職のことでバイトの先輩にこぼしていたら、数日後に彼に呼び出された。
卒業後、もし決めていないのであればここに就職しないかというのだ。思いがけない誘いだったが、それよりもっと驚くべき誘いがあった。
告白されたのだ。
小林さんのことが好きです、と。純真無垢な小学生のような告白だったが、それがまた愛しく、幸せな日々の始まりだった。