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ブルジョアの愛人
第23章 幸せは彼へのお礼

高校卒業後、仕事は二年で辞めた。本当はもっと続けたかったのだが、仕方がない。莉菜の身体に新しい生命が宿ったのだから。

だが、所謂「できちゃった婚」ではない。妊娠が分かったのは、莉菜が小林から大橋になってからちょうど半年後。だからほとんど「できちゃった婚」に近いのだが。

大橋は無愛想な見た目に反して子ども好きな一面もあり、お店に子どもがやってくると自然な笑顔になる。その表情が堪らなく好きだった。

そして、後で知ったことだが、大橋は莉菜が初めての女だったらしい。

「男が初めてとか何か恥ずかしいじゃんか」と耳まで真っ赤にして恥ずかしがる姿も可愛かった。

狭いアパートの一室は、駅前の家具店で購入した最も安いソファ、テーブル、カーテンなど生活感溢れる色で彩られている。

ソファは大橋が独身時代から使っているものでいいと言ったのに、大橋は安くても新品にこだわった。煙草の臭いが染みついているのが嫌だったらしい。

最近では、莉菜がベランダの灰皿に触ることすら嫌がる。手を洗うから大丈夫だと言っても、莉菜の身体に悪いと言ってきかない。少々過保護だが、いい父親になるだろうな、と莉菜は思う。
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