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ブルジョアの愛人
第23章 幸せは彼へのお礼
被害者と犯人の背景がドラマチックだったため、ワイドショーでも大きく扱われた。樹里の過去、そしてもちろん浩晃のことも。
樹里は四年前に施設を出て教師を目指していたらしく、教育大に合格したことを恩師に伝えるために故郷を訪れたのだそうだ。
ニュースを見るなりトイレに駆け込む莉菜を介抱してくれた大橋だったが、吐いたあとも気分が優れない莉菜を見ておかしいと思ったらしい。
ショックだった。樹里が人を殺したことは聞いていたが――
苦いものを全て吐き出してしまいたくなった。大橋は出勤時間が迫っていたが、店に遅刻することを連絡して聞いてくれた。
殺されたのは昔のクラスメイトで、いじめの首謀者。そして、不倫相手の娘。
「あの青木って子、父親と莉菜の関係に気づいてていじめてたってこと?」大橋は眉をひそめた。
莉菜はそれもひとつひとつ説明した。樹里が父親の不倫を知ったのはきっと、クラスメイトの口から。樹里が女王の座から転落したきっかけだと。その辺は莉菜も真緒たちの話でしか知らないが。
そして、浩晃逮捕のあと、会社の商品の質の良さが注目され、口コミで話題になったらしい。それはワイドショーで知った。
「皮肉過ぎるよね」
その晩、莉菜と一緒にワイドショーを観ながら大橋は言った。莉菜も頷いた。大橋に全て吐き出したせいか、気分はよくなっていた。