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ブルジョアの愛人
第3章 二人の少女
「何が…」ひどく声が上擦った。大塚は一つ咳払いをする。「何が言いたいの?」
樹里は予想以上に焦る大塚の表情を見てほくそ笑んだ。大塚は虐待を受ける子犬のような眼差しで樹里を見つめ返して来る。
しかし、その時樹里の胸を満たしていたのは、嗜虐的な感情ではなく、恋愛感情だった。
瞳に妖しげな光を宿らせたまま、樹里は大塚の方へにじり寄って行く。小学生とは思えないぐらいに高圧的な樹里に圧倒され、大塚は無意識のうちに後ずさっていた。
ガタッという音がし、大塚は何かにぶつかった。ひどく傷み、古びたシロフォンだ。思わず後ろを振り返るが、後ろにはいくつものシロフォン、グロッケン、マリンバが並べられており、入り口の扉は大塚から左へ数メートルの距離にある。
変な方向に後ずさってしまった。大塚は青ざめた。樹里は追いつめられて更に焦る大塚を、愉快そうに眺めていた。