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ブルジョアの愛人
第1章 キャンディキャンディ
裾が少しふくらんだペパーミントグリーンのワンピースは、莉菜の細身の身体によく似合っていた。白い丸襟がレトロで可愛らしい。
くせ毛を活かしたボブカットも涼しげで、今の季節によく合っている。手櫛でさっと梳かすと、毛先の少しはねた部分が掌に触れた。
莉菜は慌てて霧吹きを手に取り、はねているところに水を吹き掛ける。前髪の流し具合を左手でチェックしながら、右手でメールを送信した。
髪のセットが終わると、ワンピースとセットで買った小さな鞄とローファーを急いでクローゼットから持ち出し、忍び足で玄関に向かう。
莉菜に両親はいない。
莉菜が小さい頃に事故で亡くなったが、莉菜は全く覚えていない。
両親の顔も、写真でしか見たことがない。父も母も気の弱そうな顔をしていた。莉菜も性格はおとなしい方なので、遺伝だろう。
一度でいいから、思い切り甘えてみたかった。そんな欲求は決して祖父母の前で口に出すことはできないが、恋人が満たしてくれるから幸せだ。
眠っている祖父母を起こさぬように階段を降り、ローファーをそっと三和士(たたき)に置く。まだ油断はできない。
居間から聞こえる祖父母の寝息に耳を澄ませながら、ゆっくりと靴を履き、音を立てないように玄関扉を細く開け、間をすり抜けて外に出た。