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ブルジョアの愛人
第4章 大好きな先生

いちゃつく莉菜と真緒を横目で見ながら、樹里は小さく舌打ちをした。

大塚は樹里から逃げるように四年生の男の子の練習に付き合っている。樹里が大塚に「見学します」と伝えた時も、樹里の肩あたりを見る大塚の目は据わっていなかった。大塚が自分のことを怖がっているということは何となく気付いてはいたが、まさかここまでとは思わなかった。

樹里が苛立っている理由は、もう一つある。

樹里は以前、下っ端達と一緒に陸上クラブで活動していたのだが、樹里が突然転部した為一輪車クラブに樹里の仲間はいない。どうやら樹里は他のクラスでも評判が悪いらしく、樹里に声を掛ける者は誰もいない。かつての下っ端はここにもいるが、皆目を逸らす。

転部する際、陸上クラブにいる下っ端を一輪車クラブに誘ったのだが、皆「スパイクとか揃えるのは親に払ってもらったから」と申し訳なさそうに声を揃え、樹里について来る者は誰一人いなかった。樹里達の"友情"の薄さが見えた瞬間でもあった。

「青木さん」

体育座りのまま、ぶすっと頬杖をつく樹里に声を掛けたのは怯えた表情の莉菜だった。

「保健室、行こ?」

恐る恐る言う莉菜の瞳は憐れみと優しさに満ちていたが、その色が樹里の神経を逆撫でした。

樹里は勢い良く立ち上がると、莉菜を無視して側に置いた一輪車に跨がった。
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