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ブルジョアの愛人
第4章 大好きな先生
莉菜には私しかいない。真緒はそんな独占欲とも愛情ともつかぬ気持ちを、莉菜に分かって欲しいと思った。
だが、莉菜は――
樹里が一輪車から降り、ふと振り向くとそこには幽霊のような莉菜がいた。まだ懲りないのか。樹里の表情が苛立たしげに歪んだのは、真緒と莉菜のやり取りを知らないからだろう。
「何?」
棘のある声にハッと上げた視線は、戸惑いの色に満ちていた。意地で真緒にそっぽを向いたはいいものの、いざ樹里の前に立つと何をしたら良いのか分からない。
「えっ、あの…」
「邪魔だからどいてくれない?」
零度以下の温度で吐き捨てるその声には、大塚と話す時の媚びなど微塵も感じられない。女子は相手を選ぶとここまで極端なのだ。
「ごめん…」
わざと莉菜の肩にぶつかって去る樹里は、"あるもの"を見つけた。――暗い表情で立ち尽くす真緒だ。
二秒程で何があったか分かった樹里は唇の端だけで微笑み、今度はとびきりの笑顔で莉菜を振り向いた。