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ブルジョアの愛人
第5章 恋火にマッチ

莉菜が真っ白な頭で助けを求めた人は、真緒でも浩晃でもなく、樹里だった。

助けて、早く、来て――

同級生の少女と同級生の父親に愛されていた莉菜の顔は苦痛と屈辱に歪み、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。

「何、ガキみたいにビービー泣いてんだよ。キモいんですけど」

ペディキュアが鼻を鳴らす。由加里も沙良も愛海も笑った。いつから用意していた台本に沿って演技するように。

ふと、由加里の手が止まった。教室が先程の盛り上がりを失い、低くざわついている。莉菜もそっと顔を上げた。

「何してるの!」

教室の入り口で、隣のクラスの担任が叫んだ――いや、悲鳴を上げた。そして先生の隣に立っていた女子二人がこちらへ駆け寄って来て、苦しげに顔を歪め、莉菜の肩を支えて教室から連れ出してくれた。

「髪、こんなに…ひどい…」

「莉菜、もう大丈夫だからね」

意識が朦朧としている莉菜に優しい言葉を掛けてくれたのは、優々と真緒だった。
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