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ブルジョアの愛人
第8章 内緒の疼き

三時間目の算数が終わると、真緒は決心して優々の机に向かった。

「優々ちゃん」

真緒が何を言いたいかは大体分かっている。優々もそのつもりで頷いた。

「私、今日はクラブ休んで莉菜の家に行こうと思うんだけど…」

「私も行っていい?」

真緒の表情が途端に明るくなった。もちろん、と弾む声を聞いて、優々も彼女がいつも通りの元気を取り戻してくれたのが嬉しかった。

昼休みにクラブを休むことを大塚に伝えた真緒は、教室へ戻る途中陽平に呼び止められた。

「今日来てない、よな…」

主語が抜け落ちていたが、何のことかはすぐに分かった。真緒が頷くと、陽平はがっくりと肩を落とした。

「心配だな」

普段は無口で、喜怒哀楽をあまり表に出さない陽平がこんな反応を示すのも無理はない。

陽平は莉菜を妹のように可愛がっていたし、莉菜がクラスでうまくいってないことを知ると真緒に色々相談を持ち掛けた。

「今日さ、莉菜のとこに行かないか? 俺もクラブ休むし」

真緒は返答に詰まってしまった。できれば優々と二人で行きたい。莉菜は陽平が来たら喜ぶだろうが、行き帰りの道で優々と二人きりの時間も欲しいのだ。
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