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ブルジョアの愛人
第8章 内緒の疼き
優々もクラブの顧問に欠席を告げて職員室を出ると、廊下で真緒と陽平が話しているのを見た。
――真緒ちゃん、4組で一番モテる佐々木くんと話してる。
なぜか胸がざわざわした。それがどういった感情で、どうして込み上げてくるのかも全く見当がつかないが、親身になって話を聞いてくれた先生が他の子に優しくしているのを見た時の感情とよく似ている、と思った。
「ごめん。今日は他の子と行く約束してるんだ。あんまり大人数で押し掛けるのもちょっと…ね」
真緒が申し訳なさそうに言った。何の話をしていたのかさっぱり分からなかったが、その断り方から莉菜の家へ行こうと誘われたのだろう。優々は少しホッとした。
「そっか。じゃあ、今日はやめとく」
陽平は残念そうな顔をしたが、別れ際には何でもないというようないつもの顔に戻っていた。真緒も笑顔で陽平に手を振る。
あれ?
一瞬、真緒と陽平がお似合いのカップルに見えてしまった。そういえば、優々は真緒から恋人や好きな人の話など一切聞いたことがない。頭から血の気が引いていくのを感じた。