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自由という欠落
第6章 もつれていく
* * * * * * *
六ヶ月と数日は、瞬く間に過ぎていった。
のはなにとって、丹羽の推薦だったにせよまひると出逢って、高校生ではなくなって、自宅と学校を往復するありきたりな少女を倣ったおよそ半年は、夢のようなものだった。なかんずく学祭の舞台のヒロインに抜粋されてからの日々は、くすんだモールドに押し込められてきたのはなにとって、願ってもみなかった幸福だった。
ゆきは、のはな達に、正式に入部しないかと勧めている。返事は延ばしているにせよ、長い年月、のはなはこうした日々を求めていたのかも知れない。
繰り返し演じてきた役柄は、いつしかのはなに馴染んでいた。
明日明後日、二度の公演を終えてしまえば、かりそめの人物は、のはなの元を離れてしまう。
デズデモーナというヒロインを内部に住まわせていたところで、のはなの嚮後には何の役にも立たないのだ。寂しい。
学祭前日。
今日は休講で、各団体、明日からの催し物やらステージやらの総仕上げに打ち込んでいた。
「『教えて、エミリア。世の中には、良人以外の人と仲良くなる女の人がいるんですって。本当かしら』」
「『ええ、おります』」
「『貴女なら、どう』」
「『お月様の前では、それはもちろん私だって遠慮します。ですがね、奥様。世界中をやると言われてしまえば、いかがでしょう。それもとびきりの魅力的な方に』」
「『私なら、絶対いや。神様のお咎めも、煉獄の苦しみも、耐えられないもの』」
「『世界中をもらえるんですよ。不義が罪だという掟自体、さっさと変えてしまえば良いんですよ。もっとも、仮に妻が堕落したと致しましょう。全て良人の責任です。女の不義についてご存知なら、奥様は当然、男の身勝手もご存知でしょう?』」
「『あの人はそんなお方じゃない』」
「『例えばの話ではありませんか』」