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自由という欠落
第6章 もつれていく
のはなは、自身を離れていったチェストを目で追う。
花柄の紙で張ってあるチェストは、デズデモーナの部屋を装飾していた段ボール製だ。ゆきがのはなのイメージだと言って選んでくれた、花柄。のはなでも、否、小学生でも、持ち上げられる。
「はなちゃんのデズデモーナ様、すごく魅力的だった。声、すごい通ってたし、上手くてビックリ。臨場感、迫真の演技っていうのかな。まひるが羨ましくなっちゃった」
「有り難う。自信はないなりに、頑張った甲斐があったわ。まひるやゆき先輩のお陰かも。一番、一緒に出ていることが多かったから……」
「ふぅん。はなちゃんをお姫様にしたのは、あの二人なんだ。妬いちゃうな」
「…………。そんな、……」
「はなちゃん、部室着いたら、時間少し大丈夫?」
話している内に、演劇部の表札が現れた。
のはなは返却されたチェストを抱えて、ええ、と首を傾げる。
心陽の用件は、記念撮影だった。部員らとの写真は、着替えるまでに予定している。それでも個人的な撮影をしてこなかったのはなには、貴重な申し出。丹羽と会っていれば嫌というほどシャッターの音を聞いたろうが、代償が痛い。
「有り難う。カメラ用意するわ」
「良いよー。はなちゃんはチェスト置いてきて。私のスマホでしっかり撮って、あとでLINEで送るから。まひるも捕まえられないかな」
「……少し、待つ?」
「先にはなちゃんと撮ってから、うん」