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自由という欠落
第6章 もつれていく
陽子と岸田は、まひるを校舎裏に引き込んだ。
普段着の類の皇子服より華美な衣装。足し算で成り立っていった化粧。過剰に華やかなものを施したまま校庭に長居出来るほど、まひるの肝は据わっていなかったからだ。
「では、私はこれで。有り難うございました。おデート楽しんできて下さい」
「こちらこそ引き留めさせてくれて、有り難う。本当、残念なことをしたわ。こんな格好良い皇子様なら、中学でも、学年演劇に推薦しておけば良かった」
「そうね。清水さんがこういうの好きだったなんて、知らなくて。生徒に楽しい学校生活を送ってもらうのが、私達の仕事なのに」
「恥ずかしいですって……。それに芝居を知ったのは、のはなに逢ってからです」
こんなことをしていてはいけない。
いつまでのはなと一緒にいられる?いつまで、一緒にいて良いのだ。
自分を腫れ物よろしく扱っていたこともあった教師達に一礼して、まひるは今度こそ校舎へ向かった。
さっき心陽が先に戻ったのはなを追いかけていったのが見えたから、彼女を探していた陽子らに知らせるべきだったろうに、雑念のせいで教えそびれた。