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自由という欠落
第6章 もつれていく
「私はのはなの守り役だから」
「何それー」
美乃梨達の操作するクレーンゲームのアームを傍観しながら、のはなが笑った。
「のはなが社長にならなくても、お姫様じゃなくても、いつも味方でいるよ。のはなが困った時、苦しい時は、駆けつける。だから呼んで」
「…………」
「好きな友達に出来ることなんて、それくらいしかないじゃない?」
「…………」
永遠も、守れる保証も、まひるにはない。
それでものはなはここにいる。
「友達、か」
「え?」
「うん、ありがと。もし私が男の人だったら、まひるに惚れてた。ふふ」
まひるとのはなをからかっていくそよ風が、もどかしいような温度をひた隠していた。甘くきららかなのはなの声は、まひるにいつかの記憶を彷彿とさせる。悴せっていた胸の奥底、蓋に閉ざして幾分の時の経ったはずの潤沢が、微かに疼く。
期待してはいけない。
あの人以外のものになっては、…………
男の人だったら、と、のはなは言った。
のはなは、ヘテロセクシャルなのだ。まひるには理解し難い、女を好く男の心理はそれなりに思い描けるのに、女が男を所望する愛のかたちは現実的と捉えにくい。もっとも世に定着したマジョリティも真剣で、何かのきっかけでもなければ、容易に変容しないらしい。
のはなと西原のえにしは切れない。仮にあの青年が運命でなくても、けだしのはなは女を選ばない。
近くにいて盾になることは出来なくても、せめて、もう二度と知らないところで失いたくない。
第6章 もつれていく──完──