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自由という欠落
第7章 必要のないもの



 心陽は動機も不可解な内に、出かけていった陽子を追った。クリスマスの街は目に毒なのに、少なくとも原動力は腹いせだ。

 たった十数分電車に乗れば、賑やかな駅が心陽を迎える。


 のはなやまひると歩いたこともある大通りは、心陽の胸をつぶさに苛む。
 駅前すぐの天然石の専門店は、のはなが大粒のラリマーを載せたリングを夢中で見ていた。輸入雑貨が所狭しと並んだ店では、幼い時分の思い出話を交わしたか。動物や虫の形状をした着色料の強いグミは、憧れていた子供も多いのではないか。のはなも例外ではなかったらしく、今振り返れば何でもない菓子なのに、幼少期は親に与えてもらえないだけで特別な宝石のように見えていたのだという。スリーコインショップは、結局のところ百円玉三枚×二や、百円玉三枚×三の商品に魅力を感じる。のはなはアルパカのぬいぐるみを絶賛していて、まひるはヒヨコ。ささやかな論争になっていたのを心陽は横目に眺めながら、テディベアを撫でていた。

 陽子は、それらの店に見向きもしないで歩いていく。心陽も人混みに隠れながら、彼女を尾けた。



 日没後はイルミネーションが点く仕様の植え込みを囲った三叉路、信仰心などなかろう街にひときわ賛美歌が大きく聞こえる角に至って、陽子が初めて足を止めた。白やベージュ、黒などといった類型的なコートを着込んだ群れに混じって、時折、心陽のような春色まとった女を見かける。自分の姿は見飽きているのに、同志のような女を見ると、さしあたり当たりくじでも引いた時に似た気分が掠める。
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