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自由という欠落
第7章 必要のないもの
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装身具を贈ってもらうのは、苦手だ。
そうした私情で、まひるはクリスマス色一色の街を縫って雑貨専門店に入っていった陽子の意図とは逆に、彼女に玩具同然のネックレスを贈った。その足で歴史展を散歩して、カフェでケーキを食べてから二日と経たない内に、またぞろ不良な数学教師からLINEがあった。
家族らしい情などとうになくした両親の嘆息が鬱積した部屋は、淀みが四肢にまとわりつく。年の瀬というのに、淀みはともすれば新年の到来まで妨げんばかりに陰湿に、まひるの内部に鉛を落とす。
襖を締めきっていても、単純明快な罵声はやまない。集金業者のインターホンには耳が慣れたのか、このところ睡眠が薄れることはなくなっていた。満足のいく眠りから覚めて、まひるは今朝、場違いなまでに煌めくヘアピンに指先を滑らせていた。
銀メッキのリボンと、ラインストーンの並んだヘアピン。
陽子にジルコニアのネックレスを贈った店にも似た品々が溢れていたが、ここに五年近く眠っている、まひるが髪に飾ったのは五年程度前のことでも、永遠に消える気のしない炫耀は、このヘアピンにのみ備わる。
陽子はビジネスホテルにいた。健全な待ち合わせを気取っていても、彼女がチェックインしたのはダブルベッドの客室だ。自宅であれば心陽が来るだの、カフェでは落ち着いて話せないだの、陽子はかつての生徒の顔を見るなり、あらゆる理由を並べ立てた。
まひるが陽子と再会したのは、レズビアン限定の出会い系サイトだ。中でも初め、二人が書き込みを交わしていたのは、肉体的な出会いを求める掲示板のツリーだった。今更、何かを恥じらうこともない。