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自由という欠落
第7章 必要のないもの
「無垢よね、いつでも」
「え?」
「…………」
独り言だったのか。
ここには陽子とまひるしかいない。一方が独り言をこぼそうと、もう一方が干渉する謂れはない。まひるは陽子の指と指の隙間を撫でた。
「痛くしたら、まひるちゃんは私を必要だと言ってくれる?」
光っていたのは、やはり陽子からこぼれた潤沢だった。今度は独り言ではなかった。捨てられた小動物が心細さを訴えるのにも似た眼差しが、まひるを捕らえていたからだ。
しどけなく腰をくねらせて、陽子がシーツに姿勢を正す。上体を起こした数学教師は、まひるのおとがいに片手を添えた。触れた指先は触れたまま。切なそうに視界を細めた陽子の顔が、まひるの目交いを覆っていく。
「んっ…………」
ちゅ。
「はぁっ」
ちゅ。…………くちゅ。
陽子は羽根でくすぐるように、まひるに唇を押し当てる。とろけるような口づけが、まひるから正常な判断力を削いでいく。じゃれついていた陽子の指は、やがてまひるのレースを重ねたスカートの下に侵入して、太ももをいたずらに撫でるものになる。まひるのルージュを拭っていく陽子の舌が、肉厚の花びらを啄んで、内部の味覚をこじ開けていった。