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自由という欠落
第7章 必要のないもの
芹川達の苦悩が贅沢か否かは、本人らのみぞ知るところだ。ともすれば本人でさえ甄別出来るかは怪しい。
まひるが紬を忘れられないでいるのは、贅沢か。逸楽か。
男の人と二人きりになるものじゃないわ、まひるはあんな人達、信用しちゃダメ。
紬がまひるに言いつけた言葉だ。
まひるが思春期の少女特有の訓戒を律儀に守る下級生とは、紬とて想像もしていなかったろう。少なくとも社会に出れば、性別の異なる人間同士が全く関わらないでいるなど不可能だ。
それでもまひるは、未だ彼女との口約束に自ら縛りつけている。彼女を毀した男という象徴に、言い知れぬ悪意をいだきながら。憎まないではいられない。理論ではなく、生理的に、男という存在を肯定出来ない。
正当とは思わない。正当でなくても、異性と共存するくらいであれば、他人の事情も探ろうとしない批判家達の餌食になった方がましだ。
これが紬との絆だ。
愛を否定しながら、どうしようもなく愛している紬との。
口約束を守るしか、彼女と繋がれている気がしない。彼女のために生きられている気がしない。