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自由という欠落
第7章 必要のないもの

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 私、こう見えて加虐願望があるのよ。


 そうした底意が陽子の口を衝かなかったのは、まひるに限定した思いだったからだ。正確には今ではない、陽子の認識におけるまひるが、まだあの朗らかで優良な女子生徒のおまけでしかなかった時分の彼女に向けた劣情だった。


 物心ついた年頃から、陽子は自分の器量が可もなく不可もないと自覚していた。才色も気性も、境遇も、何もかもがだ。
 紬の存在が、陽子の凡庸がすこぶる深刻であることを改めて思い知らせた。暮橋紬という女子生徒は、凡庸さゆえに教師達からの信頼も厚く、大人達から愛されて、生徒達に慕われていた。真面目という、陽子との決定的な共通点を備えながら、紬は陽子があの年端の時分に無縁だった光彩に潤っていた。


 今でも紬に備わっていた煌びやかさの正体は判らない。恋をすれば女は輝くというが、かたちばかりの校則に平気で違反して交際していた生徒らは、掃いて捨てるほどいた。

 恋愛を差し引いても紬を輝かせていたのは、何だったのか。



 そうもありきたりな少女に、陽子は関心を持っていた。一度、担当していた美化委員の会議で考え事をしていて、生徒達の話に集中しなかったことがある。その時、紬が自分のために持参していた栄養ドリンクを陽子に譲った。あれで紬に惹かれたというのか。ただ一度の厚意に胸打たれて。





 唇同士の啄ばみは、とめどなかった。実際、陽子は屡々、キスをやめるタイミングを見失う。
 ルージュを除いたまひるの唇は、しっとりと吸いつくような質感があって、ほろほろととろけていくメレンゲ菓子を彷彿とする。陽子の鼻腔を花のような匂いが満たした。
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