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自由という欠落
第7章 必要のないもの
可愛いわね、綺麗ね、と、ささめきながらキスを離した。まひるは陽子の口説き文句をまるきり信じていなかった。当たり前だ。寝台で陽子が彼女の容姿を褒めるのは、キスの名残り惜しさを宥めるための手段に過ぎない。言葉を話すにはキスをやめる他にない。こじつけだ。
「あの、陽子さん、私どちらかと言えば今日は──…」
「私もそういう気分なの」
陽子は、自身に伸びてきたまひるの片手を手首から掴み上げた。指の隙間を陽子の指で埋めていって、皮膚の覆った硬い関節に口づける。わざといやらしく唾液を鳴らした。
「酷い女って、案外、ハマるわよ。私が佳乃にハマったのも、実はこういうのだったりしてね」
「……やだ、変態」
「大丈夫。隣のホテル街へ行けば、皆、こういうことしてるもの」
まひるの太腿に跨って、陽子がバッグから持ち出した縄を見せつけると、形の良い無垢な双眸が、みだりがましい甘みを見せた。レースとヨークが渡ったブラウスの膨らみに戯れただけで、ぴくっ、と、なよらかな線の肩が微かにたわむ。
拒絶しておけば引き下がってやったのに。
陽子は、ともすればあるじに抗う選択肢を知らない小動物を手に入れた思いに顫え上がって、まひるを下着だけの姿にした。実際の小動物であれば道徳面の問題が出るが、相手は少女だ。
両手首をうなじに交差させて羈束して、寝台のヘッドボードに繋ぐ。ブラジャーと同じデザインの、パステルカラーの小花のケミカルレースが散らしてあるパンティを下ろすと、陽子自身から感じていたのと同種類の匂いが濃度を深めた。
呼吸の速度が上がっていた。陽子はまひるの心臓部に位置する角層に口づける。