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自由という欠落
第8章 痛みと親愛
「あ"あ"ぁ"ぁ"ああああっっ!!」
この世のものならざる叫喚が、のはなの喉を突き抜けた。
西原がたくし上げたブラウスからはみ出たのはなの乳房の麓の辺に、金属の表面が沈み込んでいた。
「イヤ"ァァア"ア"あ"ぁぁ!!助けてっ、離して!!離しでえぇ"え"え"…………!!」
「おっと。長くやりすぎてしまったね、度が過ぎたよ」
「……うっ、……はぁ、……はぁ」
……──じゅ。
のたうち回りたがらんばかりにたわむ肉体は、相変わらず西原の脚に押さえつけられていた。ようやくのはなを解放した金属は、もう一方の乳房を襲った。
「あ"ああ"あ"あ"っっ…………」
地獄だ。これは、のはながのはなとして生まれる以前、今となっては知らないどこかで凄惨な罪を犯した贖いだ。
そうでも考えなければ気が触れる。まひるとも心陽とも、顔を合わせられなくなる。まだ一緒にいたいだけだ。どこにでもいる少女のように、当たり前の時間を過ごしたいだけ。
「着ているものを脱げ」
「…………」
「脚を開け」
「……っ……ぐす……」
死ねない。涙も止まない。何故、どうして、こうも人間として尊厳を否定されながら、肉体は機能していられるのだ。
脱ぎ捨てた衣服を整える気にもなれないで、のはなは西原の指図に従う。蜜も枯れた性器を開いた。
「ああ、良い眺めだ。俺は本当に可愛い婚約者を持った。所有の証はよく似合っているよ」
のはなの乳房の変色部分が、ひりりと痛む。西原のざらついた指の腹が患部をなぞって、爪で弾いた。
「のはな、今度お前の友人とやらに礼を言っておけ。あの底辺女を使えた甲斐あって、西原の事業もより安泰だ。いずれ俺の物になるお前も、一生楽に暮らせるだろう」
幾度となく眩暈を起こしかけたのに、かなしいかな、のはなの思考は冴えていた。
「…………。……え……」
だらりと股を開いていても、西原の話がいやにのはなの正気を繋ぎとめた。
自分より底辺に位置する女などいない。お前がまひるの何を知る。自分でも驚くほどの憎悪が胸奥に蠢くのを感じながら、のはなには、惨鼻に呑まれていられないという分別はついていた。