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自由という欠落
第2章 囚われの小鳥


「来春、寮を出て大学へ進むんです」

「おめでとうございます」

「それで、今までは寮母さんや先生にお世話になっていたでしょう。これからは家に帰らせて、通学も一人でさせないといけなくなりました。娘が、男女共学に慣れた学生さんと、上手くやっていけるかも心配で……」

「大丈夫だと思いますよ。お聞きしてきた限り、しっかり者で可愛い人のようですし」

「いえいえ、ぼーっとした世間知らずです。その、清水さんに、大変勝手なお願いがありまして……学校生活において娘の面倒を見てやってくれませんか」

「え……」

「清水さんには、娘と同じ学校に通ってもらいたいのです。入学手配や資金はこっちでご用意します。ボクの信頼出来る方の中では、年齢的に、貴女にしかこんな無理を言えません。四年間の給料は、今まで通りの平均額を……いえ、時間給を考慮すれば、上乗せしてお支払いしますので……」


 快諾出来ない相談、否、命令だった。

 男女共学は論外、まひるは学校と名の付く施設に懲りていたところがある。今になって、雇用主の娘の世話をするために、裏口入学。断って解雇になっても構わないくらいだ。


 だのに、丹羽は給料の上乗せを、まひるの前にぶら下げた。


「…………」


 話に聞いてきただけの令嬢に、一度会ってみたい。そこで友人になれそうなら。


 まひるの申し出によって、翌々月の冬休み、丹羽は従業員を私宅に招いた。

 帰宅していた令嬢は、掌中の珠のように育てられてきた清らかさと、彼の言葉を借りれば世間知らずそのものの無邪気を備えていた。

* * * * * * *

 顔を知った家政婦に連絡をとることは、講義室の移動時間を使えば大した作業ではなかった。茜色が空を染める時刻、まひるは心陽と落ち合って、久しい駅へ向かった。

 入学して早々、風邪でもないのに今日一日静養を求めた友人の私宅は、初めて訪った秋日とはがらっと粧いを変えていた。
 寒々しかった褐色の木々は甘辛い薄紅色の衣装をまとって、除草されていた庭は色とりどりの花が覆っている。見るからに高級住宅の並んだ宅地の道中、おりふし寛雅な淑女らが、他区から訪問した少女達とすれ違っていった。
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