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自由という欠落
第8章 痛みと親愛
「ほれ。無礼講じゃ、まずわしから気持ち良くしてもらおう」
ハァ…………
ハァ…………ハァ……
苦しげに息を継ぎながら、野田は足を揺すっていた。下半身を露出した野田の肉棒が、意思を持つ動物のように滾っていた。先端から体液が横溢している。
まひるは悪寒に引きずられるようにして、野田の足許に跪く。
野田は、おそらく西原に聞かされた事情を反芻して、特殊な状況に興奮している。だとすれば彼の法悦は、自己満足だ。まひるが自ら罠に嵌まったのは、金が目的ではない。
誰かに毀されてしまいたかった。陽子ではまひるに気休めの痛みしか与えられない。紬と同じ地獄に引きずり込まれたいのに。彼女の元へ向かいたいのに。
思春期の恋は、成長と共に、夢の中の出来事として整理されていくという。そうした理屈を、いつかどこかで聞いたことがある。
まひるは紬との繋がりに縋って、紬との記憶に泣いて、紬の背中を今も追いかけている。迷路から、永遠に抜け出せそうにない。
のはなに期待していたことも確かだ。紬と別れてから初めて、一緒にいて楽しいと感じたり、心から笑ったり、心配したり、感情を動かされたりした少女。それがのはなだ。だが、まひるは紬を忘れてはいけない。紬を支えられなかった。頼られさえしなかった。一人にしてしまった。一人でどこかへいかせてしまった。
まひるの母親とて迷路を抜け出せないでいる。不甲斐ない配偶者への不満をぼやくばかりで、そのくせいつか訪れる幸福を夢見て、ちっぽけな殻に閉じこもっている。一人前の大人が、そうして前進出来ないのだ。まひるが踏み出せないのも当然で、踏み出したくないのも本心だ。
紬を愛しているままの自分でいたい。永遠など存在しない世界の中で、たった一つの永遠。この永遠が本物と呼べている内に、誰かに消されてしまいたい。
まひるは、野田の脚と脚の間を伸びる肉質の竿に指先を伸ばす。老いた肉棒は悪感が迫るまでの異臭を昇らせていた。呼吸を抑えて口内に含む。
「んっ……」
くちゅ……ぐちゅ……
「ゔぉっ……くっ……おお……っ」
野田が呻吟したと同時に、びゅっ、と、口内を粘液が襲った。一瞬にして、味覚と臭覚が恐ろしい毒にでも冒されたような拒絶を示す。まひるの唇の端を濡れたものがぼたぼたと落ちる。