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自由という欠落
第8章 痛みと親愛


 背と背を向けて身体を洗って、髪は明け方にでも洗えば良いと結論づけると、まひるはのはなを先に脱衣所へ戻らせた。

 胸や太ももにちょっかいを出して、恋人の真似事を気取って湯気の中でキスしても、互いの裸体は見ないようにした。
 シャワーが肌を打つ音が耳に注ぐと、泡にまみれたのはなをまるごと抱き締めればどれだけ柔らかな快楽が迫るかと想像をかき立てられることはあっても、友人同士の境目は超えられない。陽子などであれば寝室へ場所を移すのも待てないで、一方が達するまで深い部分を愛撫してしまうこともあるのに、今も結局、まひるはのはなの着衣したという声がかかるまで、シャワーを流して暖をとっていた。



 部屋は、さっき横目に触れていたより日常的な眺めだった。日常に不可欠な作業を挟んだことで、生活感が、淫らな心地を幾らか薄めてしまったか。

 しかしその生活感は、のはなの引力まで奪わなかった。


「のはな」

「ぁ、……まひる……」

「着けてないの?下着」


 引き寄せた臀部から指を下方に滑らせると、備え付けの薄手の部屋着に透けるはずのショーツラインが見つからなかった。


「…………。着替え持ってなかったし……」

「私も。明日の朝、どっかに売ってないかな」


 恥ずかしげに俯く表情に誘導されるようにして、まひるは、やはり無防備になった乳房を手のひらに収めた。ふにゃりとした弾力を揉んで撫でると、呼吸を荒くしたのはなの唇が綻んだ。二枚の花びらに唇を重ねる。
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