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自由という欠落
第9章 仕掛けのない平凡

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 あんな目に遭って尚、何故、しばらくは学校へ通い続けていたか。

 学校とは、各教科の内容自体は全く役に立たないにせよ、興味のない分野に打ち込めば思考力が鍛えられるし、期末や中間考査という目標に向けて、熱意を向けたい他の事柄を一定期間自粛すれば、忍耐力も身につく。何より集団行動のノウハウを得るのに、教育機関は適切だ。

 大人が集団行動を不得手とする生き物なのに、子供がそれを習得するのは本来、至難の業だ。
 そうした問題事項はさておき、とにかく少女もあの時分は在学していた。


 あの箱庭は、将来に向けて期待をいだく子供達のための機関だ。将来に期待をいだかなくなった自分の行くところではない、そうした疎外感が、次第に少女を責め苛んだ。

 にも関わらず、桜が碧天を染める季節になっても、少女は甘辛い風に絡め取られるようにして、量産型のブレザーを着て家を出ていた。



 将来ではなく、もっと些細な存在に対し、期待していた。

 生還するかしないかは少女自身の問題なのに、別の個体である恋人に、確かに期待していたのだ。
 顔を合わせれば彼女の輝きが、胸を蝕んだ暗雲を砕いてくれるかも知れない。声を聞いて口づけを交わせば、愛の奇跡とやらが少女に注いで、体内の汚染が浄化されるかも知れない。

 何も知らない歳下の恋人を相手に、傍迷惑な話だったと思う。



 空の明るさも花の匂いも、少女には憎悪の対象だった。


 醜い人間(おとな)になってまで、誰も愛せない肉体を引きずり生かして、どうしろと言う。
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