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自由という欠落
第10章 貴女という補い

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 親友とのLINEの交換に心が躍る。

 LINEなど連絡事項や急ぎの用件がなければ開くものではなかったのに、このところ、まひるとのトークページが更新されない日はあるまい。


 おはように、おやすみ。新調した洋服や化粧品を、とりとめなく報告するだけのメッセージ。校内での待ち合わせ。

 のはなから送るようになったのか、まひるからか。覚えていないが、どうしても確認したい時が来てから、いつでも読み返せるトークページを遡っても遅くない。ただの文字の羅列が宝石箱だ。まひるとの、他愛のないやりとり。話題の締め括りや就寝前に送るスタンプ。何故、こうものはなを満たすのか。


 両親が出かけていったあと、のはなはまひるとローペースで文字を送り合っていた。
 部屋には、贔屓の歌劇団の劇中歌が流れている。クラシック調のメロディに合わせて、玲瓏な声の主旋律が愛を紡ぐ。まひるは贔屓の作家の本をとりとめなくめくっているらしい。互いに部活にも所属しないで、長期連休は暇を持て余しているわけだ。昨年の夏休みは充実していた。


"退屈。まひると話しているのは楽しいけど、坂木さんも今日はお休みで、今本当に一人なの"

"一人で留守番?もっと早く言ってよ、危ないよ。どっか出かける?"

"私にとっては日常だわ。わざわざ出てきてもらうなんて、悪いし、いい"
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