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自由という欠落
第10章 貴女という補い
失言だったと慌てた時には遅かった。二人して暇を持て余しているのは事実にせよ、のはなは自分の身辺の治安のために読書中の友人を呼び出せるほど厚顔ではない。
それとは裏腹、期待が迫る。まひるはのはなを家に一人でいさせまい。
乳房の壊死した一点は未だ指に押さえると痛むのに、美しいものでも見る目が見澄まして、キスが浴びせられる内に、この焼き印さえ、のはなは自分にまひるを与えた補翼だったのではと考えられるようにもなっている。
まだ正午にも至らないのに、腰の奥が物欲しげに疼く。
まひるは外で会わないかと提案してくるほど無欲なのに、のはなは脚と脚の間の割れ目に、彼女の感覚を思い出している。性交という不快でおぞましかっただけの行為は、まひるの指を覚えたが最後、今やのはなが自分の肉体を自分のものと認識するための手段だ。
「あぁ……あぁぁ」
のはなはパンティに指を入れた。蜜壺から這い出たものを掬って、おそるおそる陰核に塗りつける。か細い悲鳴が喉を抜け出た。
「はぁ、はぁっ、……」
愛されている。大切にされている。
両親の愛情には事足りていた少女だった所以、のはながそうしたものに枯渇していた可能性は低い。
従って、これは愛慾だ。まひるに負担をかけまいとして、のはなは彼女を支えと呼んでいるだけで、本当はとうに愛している。まひるでなければ満たされない。生まれて初めて感じた恋だ。
「筋金入りの売女だな。……俺がその快楽を教えてやったというのに」
「っ……?!」
にわかに男の声がした。のはなは姿勢を改めて、スマートホンを握り直す。新着LINEの通知があった。扉の脇に、爽やかで精悍な男の姿があった。