この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
自由という欠落
第10章 貴女という補い


「静かでしょ。こんな開放的な気分になれるのに、人間が簡単に踏み込める場所だなんて、ぞっとするわね」


 やはり佳乃の語った人物像と、実際の紬とは別人だ。

 心陽は、ここまでの道のりから平地までを整備した過去人に感心した。進化した文明に慣れた彼らも、たまには自然に向き合いたくなるものなのか。


「貴女に見せたかったの。私が引きこもってばかりじゃない証拠。それにこういう青臭いところにいると、まひるちゃんと食べていたお昼ご飯を思い出す」

「そうなの?」

「私達、いつも裏庭で会ってた。誕生日にヘアピンをつけてあげた話、したでしょ。あの時も」

「ああ、……」

「最初で最後だったんだ。来年も、またその来年も、なんて。呑気なこと考えていたな」


 淡白に呟く紬の目は、懐かしく愛おしいものに焦がれるような潤沢を湛えていた。

 件の恋人は何でも似合うような子だったから、プレゼントを選ぶのも楽しかった。彼女にしては珍しいほど柔らかに話す紬は、心陽が今まひると繋がっている事実を知れば、どんな顔を見せることか。


「まひるに会いたい?」

「私の顔なんて忘れてるでしょ」

「覚えてたら、会いたい?」

「…………」


 永遠のように長い時間を置いたあと、分からない、と紬は答えた。


「心陽ちゃんだっけ。貴女、私を幸せにしてやるって言ったわね」

「うん」

「これを見ても、私が幸せとやらになれると思う?」

「あっ、紬さ──…」
/265ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ