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自由という欠落
第10章 貴女という補い

月並みの会社員の表層を被った西原は、そればかりか傑物の風格さえある。
婚約者に手は上げても、業務には堅実な西原に、まひるは社員の虚言を打ち明けた。
今日で縁を切ってしまいたい、それで急いで西原を呼び出したかったがためにやむを得なかった。罪のない社員は咎めないでやってくれ、と一言添えて。
否、罪がない、というのは違う。
社員は、おそらく年明けのはなの臀部に裂傷を作った男の一人だ。
上司に似て、高潔に見せかけて暗い目をした部下は、まひるが西原の知人だと打ち明けた上で先刻の件を頼み出ると、息を荒げて寂れた倉庫に場所を移した。
のはなが身体を張ってまで、男の支配を遠ざけた肉体。守るべきものなどなかったのに、今更になって、まひるは凸凹同士の結合だけは拒んだ。すると性的倒錯者は下半身を露出させて、まひるに股間を揉みしだくよう求めた。少女の愛撫の刺戟に呻いて、男は尻の割れ目から固形物を放った。
…──あーあ、汚しちゃった。バレたら減給だな、俺。助けてよ。
ゴミでしかない、と思った。ゴミでしかない男の腸内に溜まっていた排泄物を、まひるは通路からこぼれ出る明かりと異臭を頼りにしゃぶり尽くした。頭上に自慰の水音が続いた。跪いた床上に、おりふし体液がぼたぼたと落ちた。

