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自由という欠落
第10章 貴女という補い
この世のあまねく醜いものを寄せ集めた肉体だ。男は男というだけでおぞましい。
恋だの愛だのに対する関心が芽生える年端に至った頃、既にまひるは同性に惹かれる性分を自覚していた。あんな幼くして根拠など持ち合わせていなかったし、男の身体を現実に見たこともなかった所以、肉体について思うところはなかったはずだ。世間一般の情報を元に導き出した想像が生理に合わないというのは、後づけだった。
想像は確信に変わった。紬との一件がなかったとしても、否、あったからこそ、西原に限っては、まひるは人間としてさえ認識出来ない。
弾力ある筋肉をまとった肉体、男にしては色素の薄い西原の四肢に、用意したロープを回していく。いつか衝動的に肉体関係を持った、玖美のような女と観たポルノ映像作品が、役立った。緊縛のノウハウまで忠実に扱われていたのを思い出す。
まひるに性的なプロセスを経ている感覚は迫らなかった。いつ暴れ出すかも分からない家畜を拘束していく感覚が強い。西原の両手首を後頭部で交差させて、M字に開脚させた下半身の余りロープは、亀甲状に這わせた胴体の纏縛に固定する。締めつけは加減した。ロープからはやや肉が盛り上がる程度にしておかねば、血流が滞って、苦痛を得る感度まで麻痺する恐れがあるからだ。
女であれば甚だ扇情的だったろう格好になった西原は、股間の肉棒から涎を垂らして、被虐に傾倒した人間とは無縁の表情でまひるをねめつけていた。
「異常だな……。一頻りのことには飽き飽きしていたはずだが、悪くない」
「聞かなくても分かります。西原さんのだらしないペニス、口より正直。マゾなら許可なしでこういうの出しちゃいけないんですよ」
「ああ、そうだ。俺はヤられる方としては、にわかだ。それはそうと、これは俺とのはなの邪魔をした詫びだろう?こいつを咥えろ、男を知れば、人生変わるぞ」
「そういう態度を躾けてあげます。痛めつけられるのにも興味あったんでしょう?マゾは黙ってよがってれば良い、これでも着けて落ち着いて下さい」