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自由という欠落
第10章 貴女という補い
無条件に優しく、のはなを肯定している目だ。
のはなは両親にこそ恵まれているが、心陽の持つようなものに触れたことがない。心陽は、けだし内でも外でもありのままに振る舞える。血縁関係にある相手でなくても、少し話しただけで、気の置けない友人になる。本当の悪意やら不条理やらを知らない。彼女自身、そういったものが釣り合わない。
心陽を信頼していたのに。まひる以上に、話しやすい友人だと思っていた。
だのにのはなは、父親の連れてきた友人に、あまりに受けとめられてしまった。のはなは、あまりに彼女を知ってしまった。
「ごめんね、可愛くなくて、綺麗じゃなくて、ごめん……」
「えっ、ど、本当にどうしたの?怖かったよね。痛かったよね」
心陽を困らせるだけだと分かっていても、のはなは駄々をこねる子供の態度で首を横に振っていた。そうした子供を宥める手つきに頭を預けて、親友同士によく見られるような抱擁に、上体をうずめる。
苦痛に、強制的な快楽。汚れた泥水をこすりつけられていたような肉体が、ようやっと毛布にくるまるのにも似た安心感に落ちていく。
「まひるは?」
「あ、そっか。はなちゃんを見つけたのは、まひると会ってね、それでLINEで──…」
「どこにいるの?」
思いが溢れて止まらない。そのどれもが心陽を傷つける刃に変わってしまいそうで、のはなは口舌を喉で止める。
次第に涙が込み上げてきた。心陽のためにつんとした鼻先、しかし頬を伝った水滴は、ここにまひるがいれば耐えられていたかも知れない。