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自由という欠落
第10章 貴女という補い
「今度は、まひるちゃんが、して?」
脚と脚の間がとろけたのではないかといった余韻の底で、唇を啄ばみ合っていると、紬がまひるの頰にかかった髪を指先に絡めた。目と目の距離が近い。
眺めているだけで安堵する。幸せなどあり得ないと、陽子にさんざっぱら反駁したのに、今になってまひるは甘い以外の何物でもない感情にとりこめられている。紬の顔を、ずっとこうして眺めたかった。誰に彼女を奪われることもなく、いかなる妨げが入ることもなく、こうも安心して二人、寄り添いたかった。死ぬまで抱かれていたかった。
こんな夜を、狂おしいほど、何度も何度も、何度も、願っていた。
叶うはずないと諦めながらも、願わないではいられなかった。
「紬先輩……。愛してます。有り難うございます。私を、見つけてくれて」
紬の胸に擦り寄ると、折れそうに華奢な腕が、存外に柔らかな体温の中にまひるを捕らえた。うなじから背中にかけてをさする紬の手に目を細めて、まひるは彼女の呼吸を裏づける胸の動きを額に感じる。
五年分を埋め合わせるようにして、そしてこの先、共にいられるはずだった時間を繰り下げるようにして交わすキスの数だけ、せめて総身の体液だけでも全て交換出来れば良いのに。…………
まひるは紬の唇の端を伝った唾液を啜って、彼女の太ももを撫でながら、首筋を啄んでいく。宿泊の用意もなかったまひると違って、紬の狭衣は簡素だ。乳房を手のひらに包み込むと、一枚の布のすぐ向こうに、生身の肉叢が盛り上がっていた。
「あんっ……ああぁっ…………あっあぁぁ……!!」
濡れた声がか細く、紬の喉を突き抜けていく。
まひるは紬を呼びながら、部屋着のボタンを一つ一つ外していく。たぷんと現れた乳房の先端を指と指の間に挟んで、形の良いたわわな膨らみを揉みほぐし出す。
「先輩……綺麗……すごく……きれ、い……」
のはなと同じ、醜悪な欲望の残滓があった。彼女のとは違って、紬の焼け跡は五年という歳月をかけてほんのり薄れていた。
ごめんね、と、何度目かも思い出せないほどの謝罪を再三こぼして涙ぐむ、紬の気持ちが理解出来ない。謝らせても、法に裁かせても足りないのは、西原だ。