この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
自由という欠落
第10章 貴女という補い

* * * * * * *

 何者かが陽子を揺さぶっていた。シーツの音が、ゆさゆさと立つ。


「よーうーこー」


 とうに意識は夢から引き戻されている。今しがた佳乃が勝手に停止を押したスマートフォンのアラームも、聞こえていた。

 目蓋だけが開かないのだ。


「陽子、いい加減に起きて!妹の卒業式でしょ?!」


 恋人に甘い佳乃にしては珍しい語調に頭が貫かれでもしたように、陽子はようやっと目を開けた。弾かれたようにして。


「っ……」

「おはよ」



 ちゅ。


 声音と違って、少しも目くじらを立てていなかった佳乃が、陽子に唇を押し当ててきた。







 陽子のこぢんまりした部屋は、いつまで経っても佳乃に似合うと思えた試しがない。支度を進める片手間に、陽子は横目で佳乃を盗み見る。自分の凡庸加減にため息が出た。

 今更、嘆くことでもない。陽子は特別に落ちこぼれでもなければ、抜きん出ている点もない。
 陽子の人生は、平凡であることがいっそ個性だ。未だ妹の友人をこっそり部屋に招く日があるが、彼女もここには浮いている。自分の自宅よりずっと居心地が良いとは言ってくれるが、それは単に、家族より陽子と過ごしている方が楽だという意味だろう。
/265ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ