この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
自由という欠落
第10章 貴女という補い
一生かけても構わない。自分がまひるの面倒を見る。
陽子の決意は口先だけにはとどまらない。
三年前、かつて陽子が落ちぶれていった口火にいた紬と再会を果たしたまひるは、今度こそこの世を去ろうと胸に秘めていた彼女に付き添おうとした。まひるは想い続けた少女と二人、一夜を共に過ごしたらしい。夜明けまでに水辺で多量の薬を飲むはずだった。
阻止したのが、陽子の妹だ。紬がまひるのスマートフォンを使って、心陽に連絡をとったらしい。紬は、やはり自分は一人で死ぬ。一人部屋に残していくまひるを迎えに来るよう、心陽に頼んだ。心陽はのはなと共にいた。何故深夜に二人でいたかは本人達のみぞ知るところだが、起き出したのはなは心陽を説得して、生まれて初めて、深夜にタクシーを呼んだという。
「まひるちゃんが暮橋さんに会えたのも、助かったのも、暮橋さんがどこにもいなくなったのも、馬鹿な妹のせい。姉として私は責任がある」
「私が悪かったわ。心陽ちゃんに余計なことを話したから。でも、のはなちゃんが結婚する予定だった男?あいつが捕まったのは、心陽ちゃんのお陰かも」
三年前は、怒涛だった。
紬を強姦した少年グループの中心が、西原篤だったと聞いた時は、心陽の妄想かと疑った。しかし彼女とまひるの押さえた証拠で、警察が動いた。西原の会社に勤務していた社員らの数人が当時の少年達だったことまで発覚した。のはなが婚約を破棄して直後のことだった。
心陽は報われないと思う。どれだけ熱心に働いても評価されない、伊達に陽子の妹ではない。
のはなは紬の私宅にまひるを迎えに行った日以来、いっそう彼女に入れ込んだ。のはなが付きっきりでいたために、まひるは紬を追えなかったのではないか。