この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
自由という欠落
第3章 選べない貴女


「お姉ちゃん、昔、どうだった」


 清々しい渋みを孕むアールグレイを喉に流して、心陽は目蓋の裏側に、知り合ったばかりの同級生の心像を呼ぶ。昨日から幾度となく頭の中で反芻している、穏やかな昼下がりの会話が今一度、心陽の胸を締めつけた。


「好きになった先輩をここに連れてきて、一晩かけて口説いたんでしょ。……佳乃(よしの)さんが知ったら、怒られそう。ね、黙っているから、詳しく話して」

「貴女も同じことするの?」

「参考にする」

「やめなさい。鬱陶しいだけよ」

「…………」

「第一、嘘だし」


 耳を疑う告白だった。

 地味で模範的な姉の、数少ない武勇伝。そこだけが陽子の尊敬すべき箇所ではなくても、心陽にとって憧れるだけのロマンはあった。


「嘘というのは、違うかな」

「失敗したの?」


 昔は、今に比べて朗らかだった。姉の口から諧謔も出なくなって、四年経つか。それでも自分や恋人には人間らしい顔を見せる陽子は、彼女自らの来し方のしくじりを、妹にまで倣わせまいとしていたのか。

 心陽が頭をひねっていると、意地悪な姉はまたぞろ首を横に振った。
/265ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ