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自由という欠落
第4章 彩りのうたかた
「ぁん、……あん、ぁぁぁっっ…………」
「デッサンって、何で、えろいんだろうね。陽子」
佳乃の指も唇も、陽子を知悉し尽くしている。佳乃は名残惜しいキスをやめると、陽子の泉門を余すところなく啄んで、愛撫していく。淫らなポーズを固定された恋人は、佳乃に敷かれて仰け反って、身をよじる。やはり悪戯を受けている女の姿態だ。
「陽子が前にモデルになってくれた絵も、優勝は逃しちゃったけど、入選してたくさんの人に見てもらえて良かったね」
「……はぁっ、……佳乃、は……教師をしているのが、もったいなっ……いもの……」
「ありがと。だけど教師になったから、陽子に逢えた。絵は副業で十分よ」
陽子の耳朶を吐息に撫でて、ささめきにくすぐって、血管が透けるように薄い肉の這った喉を啄んでいくと、乳房を強調させた縄が佳乃を迎えた。纏縛は、陽子の肉まで盛り上げていた。肉づきのほどは並みの彼女でも、こうして見ると、痛々しいほどの締めつけが分かる。佳乃は法悦して、盛り上がった肉に口づけを沿わす。陽子の肉薔薇をいじりながら。
「あぁぁ……っっ、あっ……ああっっ……」
頂戴。もうダメ。頂戴。
陽子の訴えは、甘く、切願であって戯言でもある。彼女は佳乃に貫かれることを望みながら、焦れったさに溺れてもいる。
佳乃に加虐願望はない。そのくせ彼女の一寸のマゾヒズムを賞翫する傾向がある。もうダメ、限界。自分の方が限界だ。陽子の劣情を揶揄した分、自身にも迫る湿りを自覚しながら、佳乃は恋人に指を突き立てた。熟したざくろを攪拌して、薄紅色の肉叢を吸い上げて、アイマスクを剥いでキスを重ねる。
「んっ……佳乃っ……っ、んん!」
「陽子……」
華やかなものを好む佳乃は、陽子のどこに惹かれたのか。黒曜石のつやを湛えた瞳を覗いても、答えは見えない。妹の方は、いっそ派手の類なのに。
「佳乃……」
陽子から引き抜いた指先は、汗の味も混じっていた。気怠げな目を細めた恋人が、ソファに頬杖をついた佳乃の首に腕を回す。
「キスして?」
首を横に振る理由はなかった。
「心陽をモデルに使う時も、こんなことをしているの?」
首を横に振る理由しかなかった。
陽子に刹那落ちた期待を外した時に似た翳りは、佳乃の自惚れが見せたのか。