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自由という欠落
第4章 彩りのうたかた



「まひるの先生達だったのね。綺麗な人……」

「正確には、私の担任は別の先生だった」

「そっか、陽子さんも岸田さんもお若いものね」

「佳乃さんは、今年も担任してるみたいだけどね。今年もお姉ちゃんと共同作業だーって、張り切ってた」

「すごいわね、恋人同士で同じクラスを持つなんて」



 心陽曰く、岸田は処世術に長けているらしい。
 物事を真面目に捉えて、目先の問題にことごとく馬鹿丁寧に向き合っている内に、周囲の都合の餌食になる陽子と違って、岸田は周囲を彼女のペースに巻き込む。ベテランの教師を相手にしても物怖じしない岸田が、彼らの信頼まで得ているのは、絵画の腕と、彼女の立ち回りが功を奏しているという。岸田のクラスの副担任が陽子であるのも、彼女が巧みに理屈を並べたからだという。


 高原のテラスは肌寒い。

 とりわけ薄着で出てきたのはなも、フラワードットのシフォンで出来たフリルブラウスに、取り急ぎキャリーバッグから白いショートモヘアのボレロを羽織っていた。
 
 
「ところで、高地って眺め良いね。写真撮っておかないと」

「本当……。こんな綺麗な場所、私初めて」


 心陽がスマートフォンをカメラに設定すると、トレイを持ったホールスタッフがテーブルの側に足を留めた。


「お待たせいたしました。ご注文の、ハーブチキンとレモンの春パスタ、BLTサンド・サラダ添え、カリフォルニア丼でございます。以上でお揃いでしょうか」

「有り難うございます」

「はい、はなちゃん」

「有り難う」

「写真は、まずこっちか」

「映えるねー」
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