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自由という欠落
第4章 彩りのうたかた
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牧歌的な眺めの続く観光地は、長期連休に羽を伸ばしに訪ってきた人々で静かな賑わいを見せていた。ともすれば住人を上回る密度ではないか。
陽子らと解散すると、まひる達は事前に調べておいたミュージアムを巡ることにした。
市営電車に乗り継いだ時は緑がもっぱら窓を流れていただけなのに、実際に歩くと、多様な看板を掲げた小粋な建物が集まっていた。商店街も活気がある。どの施設も、駐車場は大半が埋まっていた。確かに施設と施設はなかなかの間隔があって、バスは一時間に二、三本程度通るくらいだ。
もっとも宿泊先の最寄から一駅目には、ガラス館とクマのぬいぐるみが有名なミュージアムが隣接していた。
先に門をくぐったのはガラス館。
まず、軽量で薄いグラスや皿などの食器、大容量の瓶や置き時計といった日用品が展示してある部屋が、見物客を迎えた。先へ進むにつれて、装飾性が高くなる。飲み口にいばらが這わせてあって持ち手に蝶の留まったジョッキに、磨りガラスの底辺に貝のモチーフが埋め込んであるデザート皿、飴細工を聯想するカトラリー──……。途中、他より明るい展示室で、職人が製作過程を披露していた。カラフルなガラススティックがバーナーの上で飴玉ほどの小動物に姿を変えていく様は、それまで不満げに目を腫らしていた親子連れの幼児も興味津々に注目する。更に奥へ進んでいくと、ひときわ賑わっている展示室に出た。そこは一面の星景色。しめやかなBGMの流れる空間は、壁や天井、床が大理石で覆ってあって、その硬質な黒に、ガラスのオブジェが白や虹色の反射光をきらめき渡らせている。天井から垂れたペンダントライトのセードも、ガラスの星だ。