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自由という欠落
第4章 彩りのうたかた
* * * * * * *
森林を背にした西洋風の宿泊施設は、陽が落ちると冷涼なしじまが夜を覆った。
三角屋根の白い本館に境を接する駐車場には、数台の車が停まっている。エントランスには他に、鉢植えや、樹木がまばらに聳えていた。緑溢れる一帯は、点々と窓の灯りが見えるだけで、物音一つ立たないような静けさだ。
コンビニエンスストアで買い込んできたレトルト食品を夕餉にして、順に入浴を済ませていった。まひるものはなも、心陽も、部屋着姿ですっかりくつろぐつもりでハーブティーを片手にガイドブックを囲んでいた時、スマートフォンの音がした。心陽に、陽子からLINEが入ったのである。
陽子と佳乃が、カラオケ店へ出かけるらしい。一緒に行かないかという誘いだった。
「だって。どうする?」
「カラオケ、行ったことないの。テレビで見たことはあるわ、実際もああいう感じなの?」
「店によるかな。のはな得意そう、聴いてみたいかも」
「そっか、行けばもれなく、はなちゃんの歌が聴けるのか」
まひる達が階下へ降りると、佳乃が眉根を下げていた。何か大変なことでもしでかした、悄々とした顔つきだ。
聞けば、陽子が心陽にLINEを送った直後、レンタカーが二人乗りだったことに気づいたらしい。
ペンションからカラオケ店への所要時間は十分程度だ。心陽が、佳乃が往復して一人一人移動させてはどうかと提案した。もっとも佳乃はそれを聞くなり、田舎の夜道だ、パトロールは粗放であろうとたかをくくって、まず心陽とのはなを二人同時に乗車させると言い出した。
かくてまひるは、かつての教師と二人、凄寥の駐車場に残された。