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自由という欠落
第5章 始まりの同義語は多分

 まひるは玖美に背を向かせて膝に乗せた。重たいから、と、たゆたう玖美の抵抗は、湯で浮いているからと適当な言葉で押さえ込んで。本当はほとんど浮いていない。玖美の髪を手櫛に通して、うなじを拓いた。生え際に唇を寄せて乳房を手のひらになぞって、昼間は完膚なきまでにロリィタ服に隠れている豊満な丘陵を指でいじると、頂のコットンパールはいっそう滾った。乳首勃ってる、気持ち良いの?とろみを塗りつけながらささめくと、玖美は羞じらう演技をしてみせたあと、当たり前じゃない、とおとがいを引く。
 浮かない水位は都合良かった。体重を気にかけていた玖美は、だのに重心を浮かせられなくなっていった。まひるは片手でとろみ浸しになった玖美の乳房を揉んで、もう片手にもとろみを連れて、腹を這ってみぞおちに円を描く。玖美はひくんひくんと顫動して、自ら後方に尻をすりつける。まひるは玖美が落ちないよう、膝を僅かに曲げていた。まひるの膝が、玖美の割れ目を支え上げて、しごく。熱くとろけた肉薔薇は、みだりがましい湯によるのか、それとも玖美から分泌される欲望か。


「あぁっ、ぁん、はぁっ、ぁっ……あん!、そんなとこっ……やぁん、お股、……あぁぁ……こすれるっ!……やだぁっ……あぁぁっ……ひっ、ああっ……ああっ!……」

「玖美さん感じすぎ。ここじゃ挿れられないから、のぼせるまでにしっかりして」

「んなっ、こと……ひっゃ、あっ……言われたて……──ぁぁああっ、あっ、あん!やぁぁんっ!……あっ……ひくっ……そこ、そこ無理ぃぃ……っっ」

「もうやめるよ。玖美さんは魅力的だけど、救急車沙汰になるの、私は勘弁」

「待ってっ……もう少しっ、もうちょっと…………あぁぁぁあぁぁんっ」


 褐色がかったグミを指の腹に撫でては弾いて、揉み回す。まひるはおりふし玖美の丘陵の麓をなぞっては、手首でもう一方の乳房を刺戟していた。右手は陰毛を弄んで。滑るから落ちないで、と、ささめきを耳朶に転がしながら、玖美の割れ目に触れたももを上下左右に動かす。性器は、明らかに湯とは別のとろみを滲ませていた。



 玖美の匂いが薔薇の香りを相殺していた。甘く淫らな女の匂いだ。



 花びらは消えていた。こすれた肉叢と肉叢の間に淡い泡が這っている。



 一瞬の贅沢な光景は消えていた。刹那の光景の名残りの泡も、身体を洗うためにはさして役立つまい。
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