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貴女に溺れて彷徨う
第3章 不自由への憧憬
食卓を挟んで向かい側にいる元同級は、かつての蜷島さんなどどこかへ飛んでいきでもした風だ。あゆみの成績に伸びしろが見えてきた分、このところ夫婦仲まで円滑らしい。
「酷い言われようもしたけれど、私だってあの人がいきなりピアスやパーマなんかしたら驚くわ。おとなしい見た目も含めて惹かれたんだし」
「お互いおとなしさを求めてたの?」
「分かりやすく言えば、ね。可もなく不可もないところ、一緒にいてホッとする。何より、あゆみや私だけを見てくれる。それって家族想いなのよね。他の人達からすれば大雅は平凡極まりないでしょうけど、私にはたった一人の王子様だわ」
どこまで鈍感なのだとか、頭に花でも咲いたのかだとか、あたしが通りすがりの第三者なら、きっとみなぎを冷やかしていた。
あたしの知らない彼女の十二年を知る男の話を披露しながら、みなぎこそ姫君のような顔にならないでと思う。
俯いてばかりいたみなぎを鼓舞しても、あゆみの勉強に協力しても、あたしが彼女と一緒にいたくてとる行動は、顔も知らない男に還元されるだけなのか。