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貴女に溺れて彷徨う
第3章 不自由への憧憬

* * * * * * *

 あゆみの顔かたちはみなぎに似ている。

 黒髪ノーメイクいう、小学生女子の典型的な風貌でも、あゆみは子供らしさより、女児ならではの愛らしさが強い。発育も良い方で、装い次第で垢抜けるのは明らかだ。

 仮にも元同級生の娘という年端の少女に恋愛感情は持たないにしても、そんなあゆみとの勉強会を、あたしは楽しみにしているところがあった。


「お母さんと私、似てないよ」


 復習の合間のひと休み、そうしたあたしの一言に、あゆみは即座に否定した。口調が気だるげなのは、単に疲れているだけだろう。


「お母さんもお父さんも、優等生で真面目だったからね。あの二人の価値観を押しつけられても私にはついて行けないし、レベルが高すぎ。生まれたとこ、間違っちゃったとも思ってるよ」

「そう?お母さん真面目かなぁ」

「莉世さんなら知ってるでしょ。……だから、憧れるんだ。親が放任主義な同級生とか、自由にさせてもらえる家の子達に」


 相変わらずピンクと白が多くを占めるあゆみの部屋は、両親の愛情を代弁している。 
 度の過ぎた愛情や干渉は、親から子供に対するものでも、凶器になり得ることがあると思う。時折、あゆみの顔に小学生らしからぬ影が落ちるのも、みたぎ達による愛情の爪痕が、彼女の内側の柔らかな部分を引っかいた証か。
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