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貴女に溺れて彷徨う
第3章 不自由への憧憬
ややあって、あたし達の暇を救済するタイミングで、またしても珍しい客が来店した。
「優香?!」
「高垣さん!久し振りー」
焦げ茶の髪をきっちりシニヨンにまとめてヒールを鳴らして歩いてきたのは、四ヶ月前、マッチングアプリで知り合った──…厳密には再会した、同い歳の女だ。デート向けのフル装備でもなければ、女子会向けの攻めた格好でもない優香は、こうして見ると、本当にどこにでもいる事務員だ。
「いらっしゃいませ。初めまして、井山さんですかぁ?」
「どうも。えっと、……って、……私、有名?!」
「いらっしゃいませ、優香。彼女、甘利ひなた。可愛でしょ」
「うん。可愛い。って、そんな子いるのに何であんなの使ってたの?」
「お似合い?」
あたしは抱き寄せたひなたの肩から髪は指を滑らせて、猫でも撫でる手つきで彼女の波打つ髪をとかす。
相変わらず今日は甘えたい気分なのか、ひなたはごろごろと喉を鳴らさんばかりにあたしにすり寄る。