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貴女に溺れて彷徨う
第3章 不自由への憧憬
「あ、来ちゃった。Tenue de bonheur、気になっていたんだ。高垣さんがいるって聞いた時から」
「そうなんだ、ありがと。せりなも、もうすぐ来るよ」
「ほんと?!」
「遅番だから。せっかくだし、何か見ながら待っててよ。時間大丈夫?」
「うん。仕事、手、空いてて。しばらく戻らないって言って出てきたから」
それからまもなく、せりなが出勤してきた。相変わらずTenue de bonheurはまったりとしていて、さしずめ同窓会日和だ。
「わぁっ、井山さん?!」
「伊野さーん!高垣さんから聞いてたよ、ほんと貴女達腐れ縁よね。会いたかった!」
「変わってない、やだビックリ、懐かしい……」
「お互いね。伊野さん相変わらず綺麗だね。細っ、ちゃんと食べてる?」
「思いっきり。今も豚骨ラーメン大盛り食べてきた!」
「豪快ー!」
全員が手隙だったのもあって、三人がかりで接客した優香は、友人として申し訳なくなるほどのコスメを購入した。
ひなたが下地を勧めれば、彼女のような美肌になれると思い込み、あたしがカラーメイクを勧めれば、どれも捨て難いと絶賛し、せりなが会社に戻っても問題ない範囲でタッチアップをしてやれば、使ったコスメをほぼ一式所望する。せりながレジを打つ傍らで、ひなたとあたしは、彼女が悪質なセールスに引っかからないか心配し合ったくらいだ。