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貴女に溺れて彷徨う
第1章 眠り姫は魔法で目覚める
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Tenue de bonheurは、全国のほとんどの百貨店に店舗を構える有名コスメブランドだ。
コンセプトカラーは上気した女の子の頬を想わせるピンク色、定番からシーズンごとに出る限定品まで可愛らしい感じの色味のアイテムがラインナップの多くを占めて、カラフルながら、鮮やかというより全体的にふんわりしている。シルバー、フロスト、花柄にスワロフスキーの装飾が特徴的な容器やパレットは、収集を楽しみとしている熱心な愛用者達もいる。
市内にあるTenue de bonheurの内一店舗に、あたしは十二年勤務している。学生時分からの腐れ縁でもある伊野せりなと、そして二年前に入ってきたひなた。あと一人は変動があって入ったり辞めたりしているにしても、だいたい四人で回せている。
平日の朝、とりわけ客の少ない時間、あたしは一昨日のことを休み明けのひなたに話した。
「お知り合いだったんですかぁ?莉世さん顔が広いです。さすがです」
「そういう問題じゃないでしょ。って言うか、何やってんの」
割り込んできたのは、せりなだ。さっきまで届いた荷物を納品していたのに、しっかり耳をそばだてていたらしい。