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貴女に溺れて彷徨う
第1章 眠り姫は魔法で目覚める
目縁からこぼれ落ちそうに大きな目を輝かせるひなたとは対照的に、せりなが顔に張りつけたのは失笑だ。
とは言え、せりなは中学からの仲。ここまで長いと、歯に衣を着せられなくなるのは仕方がない。
「でも、蜷島さんか。懐かしいな」
「せりなは覚えてる?」
「歌がすごく上手い子。いつもぼそぼそ喋るのに、音楽のテストで彼女と二人一組になった子なんかは驚いてたよ」
「そうなんだ」
「まぁそれ以外は、影薄かったしね。私はあの子、却って静かすぎたのが印象に残ったんだけど」
静かゆえに印象に残ったというせりなの言葉に、あたしは二日後、大いに納得することになる。
あのあと優香はスマホを出して、あっという間に稲本さんのスケジュールに同窓会を組み込んだ。と言ってもたったの三人だ。
かくて翌週、再びあたしは優香と再会した駅へ向かった。
肩より長めの焦げ茶の髪はいつもより念入りに巻いて、洋服は、LIS LISAのサックスのギンガム柄にフルーツパフェ柄のプリントされたワンピースに肩から二の腕の三分の一が開いた袖が夏らしい、けれど丸襟は二段のレースが暑苦しいようなシフォンのブラウスを合わせた。洋服に合わせて、アクセサリーはQ-potのレモンのネックレスと蜂蜜色のメルティリング。果汁の垂れたレモンとは、まさに神的な組み合わせ。化粧はオレンジベースを意識した。サックスの洋服にこの色は、隠れたベストカップルだ。