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貴女に溺れて彷徨う
第3章 不自由への憧憬
「それより最近、もっとどうしようかと思ってるのは……聞いてよ響さん!」
「どうしたの?」
「そのあゆみちゃん。何となく、あたしを色眼鏡で見てくれてる気がするの。小学生相手に、憧れだとか可愛いとか言わせるなんて、なんか悪い気がして……」
「良いじゃない。莉世さん、女子高生にもモテてるんだし」
「からかわないで。お年頃のお客さんとあゆみちゃんは、別。あたし、みなぎとタメだよ。憧れのお姉さんポジションじゃないでしょ」
「莉世さんが可愛いのは事実だし……。小学生の女の子って、意外と成人女性に憧れるものよ。ウチの娘もそうだった。小学生の頃は私の妹にくっつき虫で、よく真似したがってたな」
「そういうもの?」
響が目を細めて昔話をする彼女の娘は、血縁がないという。
利害一致の婚姻関係を結んだ響と彼女の配偶者は、唇を重ねたこともない。彼女らは親族の目があるところでは徹底して本意の夫婦を演じ、二人揃って医師の友人の協力を仰いで不妊を主張し、姉弟の養子を迎えるための許可をもらった。
女のみを知る響と、他者への恋愛感情をいだかない、彼女の友人。二人は代わりに朗らかな友情に結ばれていて、娘と息子を骨肉の親子に負けないくらいに溺愛している。
「高校生か。難しい時期だね。お父さんが許しても、お母さんが他の女と遊んだら、娘さんは傷つく年頃じゃない?」
「ウチはそういう難しい家庭じゃないわ。私達がキスしない理由も、小さい頃から聞かせてる」
「本当はそれが正しい教育かもね。日本は、偏った人間を作る教育ばかりしているから」
「理解してくれて嬉しい。だから私は自由なの。莉世さんは、自由じゃ……ないかも知れないけれど」
稲本さんしか考えられないんでしょう、と、響が目を伏せた時、デザートが運ばれてきた。
あっという間のディナーだった。さっき前菜を味わっていたかと思っていたのに、早い。