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貴女に溺れて彷徨う
第3章 不自由への憧憬
「ァンッ…………あっ……あぁあっっ……あんっ!……──」
指を曲げたり襞の壁をこすったり、撹拌したり、彼女が酩酊するほどあたしは彼女に夢中になる。
まるであたしは、彼女の熱い肉叢に、声に、匂いに遭難する漁師だ。
合間に指を引き抜いては、舌で潤みを愛撫して、指を増やして突き上げる。
快楽を共有する以上のものは求めないと前置きした響は、もしあたしに本意の人がいなくても、同じことを言っただろうか。みなぎより先に出逢っていたら、あたしは彼女を前にして、まごころ深い女を演じただろうか。
愛液をまとっていない方の指を唇に当てて、舐めてとささめくあたしに従う彼女は、素直な小鳥そのものだ。虫を嚥下する花よろしく妖艶で、それでいてきっと蜜しか備わっていない口内は、その行為だけであたしを逝かしかねない。
話より確かな方法で、あたしは響を探ったのかも知れない。チェックインした口実には二人して触れず、風の音も立たなくなった真夜中に、清々しい眠りに就いた。
朧な夢の中に見かけたみなぎに、あたしは何事もなかった顔を向けて、貴女以上に好きになれる人などいないと言って、真綿のような刹那を過ごした。少しの力で引けば千切れてしまうほどの関係しか、彼女には期待出来ないのだと、性悪な悪魔がどこかで笑っている気配がした。
第3章 不自由への憧憬──完──