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貴女に溺れて彷徨う
第4章 変わらず捕まえていられたら
店員に洋服を預けると、あゆみはキャンディショップの売り場のようなショーケースを見に行った。
あたしはワンピースをレジ近くのラックにかけた店員に、声をかける。よく見ると顔のタイプがひなたに似ている。
「ブラウスも入れてもらえますか。お会計は別で」
「えっ」
割り込んできたのは、みなぎだ。
「よく考えたら、みなぎに誘われたのが嬉しくて。あゆみちゃんの誕生日プレゼント、用意してなかったなって」
「気にすることないわ。私も莉世とは会いたい口実みたいなものだったから……」
「みなぎどうしたの、熱でもある?」
「失礼ね。友達が友達に会いたいと思って、……こういうの、おかしいの?」
「おかしくはないけど……みなぎは、陰キャだし」
こういう時、アパレルショップの店員は偉い。目の前で女二人が口論しようと、愛らしい顔に曇り一つない笑顔を張りつけて、終わるまでじっと待てるのだから。
結果的に、あたしは苺クリームのデコレーションケーキのようなブラウスをあゆみに贈った。陽キャの間では誕生日を物理的にも祝うのが普通だというあたしの出鱈目に、みなぎは頷くしかなかったからだ。