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貴女に溺れて彷徨う
第4章 変わらず捕まえていられたら


 他にも雑貨屋を見たり、Tenue de bonheurに立ち寄って、出勤していたせりなにみなぎのナチュラルメイクを頼んだり、本屋であゆみが参考書を見ている間、あたしはみなぎに好きな本を紹介させて過ごしたりした。

 教育熱心で生真面目な母親、あゆみにとってみなぎが窮窟な保護者なのは事実にしても、こうして二人を見ていると、何だかんだ仲が良い。他愛ない話で笑う彼女らは、カフェに入れば肩を寄せ合い、真剣な顔でメニューを睨んで、幸せ家族のワンシーンを描き出す。


「こうして三人揃ってると、本当の親子みたい」


 ポップで女子受けを狙ったような機体の並ぶゲームセンター一階で、UFOキャッチャーのショーケースに穴が空くほど集中してボタンを操作しているあゆみのつむじを眺めながら、あたしは隣のみなぎに言った。
 大音量の効果音が響き合う中、みなぎの声がこうもぼそぼそしていなければ、そうだったら良いのにと言う彼女の言葉を、あたしはどこかの機体が発した音声だと聞き違えていただろう。


「え……」

「あゆみは莉世のこと気に入ってるみたいだし。それにこの子が塾へ通い始めた頃、大雅だと勉強を教えようとしても喧嘩になっただけだったのに、貴女にお願いしてから、苦手科目も私が言わなくても教科書を開くようになったわ」

「それで彼との関係も、マシになったんでしょ。なのにあたしに、そんな思わせぶりなこと言って良いの?」
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